アメフトとサッカー、どこが分岐点だったのか⑪(終)結論として アメフトが安定して盛り上がるためには

 

結果論ではありますが

まず子供の頃から競技をする/知る環境が違います。サッカーやバスケットは小学校の体育の中で触れ、基本的なルールを知ることが出来ます。ところがアメフトはなんとなく似ているフラッグフットボールはあってもそれでアメフトそのものの基本ルールに触れている訳ではないのです。
この点、スタートラインに大きな差が出来ている状態であったと言えます。

その上で、元々カジュアルの一端で目立ったアメフトは、母体となったアメリカン・カジュアルの衰退により足場がぐらつきました。

さらにバブル景気による「ジャパン・アズ・ナンバーワン」により「憧れのアメリカで流行っている」というそれまでのウリを失いました。

Jリーグの開幕とサッカーW杯によって「アメリカ以外にも凄い興行スポーツが存在する」という事を知ってしまいました。

最早「全米が大興奮」という惹句は人々を引きつける魅力がないのです。憧れのアメリカは既にメッキがはがれたのです。

その上で、そもそも「国外チームの興行」と「国内チームの興行」は別で、かつ「興行」と「競技経験」も全く別であると考えなくてはならないのですが、そこがアメフト側では大きく欠如しているのです。

つまりサッカーは「競技経験者は多い」し「トヨタカップは満員御礼」だったけれど、JSLは閑古鳥で「競技の未来と国際化」で危機感があった訳です。
サッカーが20年かけてロールモデルを作り上げた為に「手頃なサイズ感と努力すれば届きそうなイメージ」から多数の自治体が「J参入」を掲げてきました。
実際安易な考えで取り組んで上手く行かず撤退、チーム解散というケースは我々の見えていないところで沢山あります。そうしてJ3まで拡張された中で相当数淘汰され、リーグ創設から30年近くになってJFLまで含めて安定的な形となりました。

このロールモデルの他にもJはリーグとしての運営方針を何度となく明示して「チームが突然死しないように」対応してきていて、方針が明確です。
なので「J制覇は考えていないがチームとしてJ1に定着することで企業として安定する」目標のチームもいる訳です。
それは単に「日本代表チームとして世界に互する存在を安定的に排出する」のが目的だから許される訳です。

それに対してアメフトはどうでしょう?
関東の学生で1万規模の入場者を集める試合は、現在の制度では皆無です。以前あったあずまボウル(それ以前ではクラッシャボウル)のようにスポンサーが付いて報道がされやすい状態というのは無くなってしまいました。
関西学生も2017年シーズンから看板の関立戦最終節が1万人を割り込みます。この理由を西日本選手権の制度改革に求めるのはちょっと筋違いです。
個人的には2016年シーズンのライスボウルでの敗戦から、関学側が「外国人ガー」「社会人ガー」と言い訳をするようになった事でそれまで付いてきたライト層が皆が醒めてしまった
事と、そんないい訳しか出来ないチームがリーグを勝ち続けている事で競技そのものへの興味が薄れてしまった事の方が大きいと思います。

というより、そもそも関西在住のフツーの会社員の人(前の会社の大阪営業所の人)に言われましたが、「アメフトは関西学生スポーツ人気ナンバーワンって言うけど、そもそも学生スポーツの人気なんてマニアしか見てない程度のものだから。一般の世間では興味なんてないんだぜ」というのが本質なのです。

ましてや2000年代から「集団で何かする事」より「個人で活動した結果がバズって集団化する」方に若者文化が舵を切っている中で、OBOG父母会が幅を利かせるスタンドに率先して行く事はないのです(そもそもその風潮は平成時代に顕在化していましたが、大学のゼミやサークルと言った同調圧力が勝っていた時期があって、2ch以降のWeb文化隆盛から既存集団への帰属意識が低下しています)。
それ故に観客席が高齢化し、昨今の経済事情でドロップアウトした人の後継者が現れず、その複雑な要素の交わった結果が現在の状況なのです。
それらに対して、学生フットボール界隈は「未来」を語ることが殆どありません。そこに未来を感じることが無い以上、外部の人は集まってこないでしょう。

社会人側も同様で、もの凄く残念なのは「かつて実業団だったチームが、クラブチームになっても、かつての範囲でしかチームの活動をアピールできていない」現状を理解していない運営が多いという事。
特に「地域密着」に呈する誤解は小規模チームほど激しく、自分たちのコミュニティ(選手・スタッフ、選手・スタッフのOB、その家族、その勤務先、自チームの練習グラウンド近辺、練習グラウンドと最寄り駅の間の道路沿い)から広がることはなく、世代が上がれば様々な事情からそのコミュニティから脱落していくのに新たな広がりがないから緊縮していく。
でも昔のコミュニティの「やる気に満ちた(というが温度差があったのに盛り上がって気付かなかった)あの当時の感触」を正しいとしている人たちは、そこにすら行き着いていません。

これらの事を総合すれば、現時点でアメフトはサッカーの20週ほど周回遅れの位置に居ます。また、ラグビーから見ても10週ほど遅れているでしょう。
これを取り戻すことは、従来のアプローチの中では無理があります。全く別のアプローチや別の到達点を設定しなくてはいけないのです。

恐らく、社会人協会のトップはそこに意識が行っていると思います。同様に日本協会もそこに意識を向けつつ学生側に配慮するジレンマにとらわれてると思います。

でもファンやチーム運営がそこを向かない限り、流れはそこに行きません。

それが、サッカーとアメフトの置かれた現在地の差となっているのでしょう。

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