アメフトとサッカー、どこが分岐点だったのか⑩学生スポーツと社会人スポーツとプロリーグの違い

 長々と歴史背景について語ってきましたが、ここで学生スポーツと社会人スポーツ(実業団とクラブ、セミプロに細分化されますが)、プロリーグの違いについて明確にしましょう。

1.競技を取り巻く社会環境の違い
・高校以下:学校の通学圏における社会的地位。宗教側面を除いて、生活環境に溶け込んでいることとか親子代々がその学校をステータスとしているかに影響する。
・大学:主に在学生と卒業生によるコミュニティ。戦前はアメリカのようなタウンシップがあったが巨大キャンパス化した時に地域との関係が途絶している(大学が地域のシンボル・ステータスではない)→基本遠方キャンバスが優勝しても地域でパレードすることはない。
・実業団:原則として地域の就職先・取引先としてのステータスがある事業所城下町スタイルとその企業という「運命共同体」の社会範囲。
・社会人クラブチーム:チームに関わる選手スタッフと、その練習グランド近郊の人たちの小さなコミュニティ。
・セミプロ:スポンサーが練習場所を提供しているだけなので、選手の作るコミュニティが母体。
・プロリーグ:チームの収益源となる顧客コミュニティが母体。それが地域だけとは限らない。

2.収益の確保スタイル
・高校以下と大学:学校運営費とそれにプラスして後援会寄付。基本競技での収入は無い。
・実業団:広告宣伝費と福利厚生費。競技での収入は会社会計に入る。
・クラブチーム:スポンサーフィーと選手の持ち出し。競技での収入は運営費に回るが大概は赤字。
・セミプロ:スポンサーフィーと賞金。
プロリーグ:スポンサーフィーと放映権料配分等、主催試合収益。

従って現状非実業団のプロリーグ(プロアマ混在を含む)のプロチームは、自分たちが生存するために観客動員を維持しなくてはならないですが、社会人チームは原則として「スポンサーフィーの範囲で福利厚生の目的の動員」が出来ればいい訳ですから、チームの社会環境の内側で処理できればいい訳で、逆にその社会環境外から人に集まって貰う真剣な理由は内のです。

実にJリーグは上手く立ち上げたものです。まず経営基盤として曖昧に人を募るのでは無く「まず地元の社会に溶け込む事」を優先しホームタウンへの密着を原則としました。それまでの実業団で横行していた「福利厚生や接待のための招待券」は禁止されました(実際開幕前年のナビスコカップでは2チームが処罰されている)。最低規模としてスタジアム収容人数1万5千人ほ義務づけたのは「空席が目立たないことでチームが愛されていることを示す」のに適正な規模だった訳ですし、同時に「それくらい埋められないと安定収益に繋がらない」という基準を示したわけです。
※この数年セルジオ越後がこの基準に噛みついてますが、これは明らかに間違った噛みつき。

もうお解りでしょう。
サッカーは「全て自分たちが喰っていく為に必死に地元に応援して貰う環境を作る」為に集客に力を入れています。
社会人アメフトでそういうチームは、残念ながらオービックとノジマ相模原だけです。
地元の商工会と手を組んでいるチームが何チームあるでしょう? 地元のイベントに徹底して参加してチームをアピールしているチームが何チームあるでしょう?
いやいや、集客努力について「協会が努力しない」とのたまうチーム関係者がどれだけいましたでしょうか? すくなくとも5年前までは平気でいましたよね。
平たく言えば協会が努力してなんとか観客を呼び込んでも、リピーターになって貰う努力はチームがしなければいけないのです。

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