アメフトとサッカー、どこが分岐点だったのか⑨学生スポーツの二極化とそれに気付かない人々

 既に高校野球の商業ベース移行スは1960年代から言われている(応援ツアー等)のですが、新規開設高が優秀な人材を集めるためにスポーツを使うのが顕著になるのが1970年代。この頃から越境入学や付属校囲い込みが話題になっています。

ところがここに新聞社の思惑が入ります。既に高校野球を朝日・毎日が押さえてしまった事から読売のサッカー、産経のバレーボールがテレビ中継と供に商業化されます。

これに対して他の、特に競技人口の多いバスケットや伝統的競技の陸上・器械体操・水泳は決して商業化に行かなかった……というより五輪以外の国際大会にあまり重きを置いた宣伝をしてこなかった事と収益構造ピラミッド(中学生から日本協会傘下に加盟させてその登録料で頂点の代表選手の派遣に宛てる構造)が出来上がっていたので、高校レベルでは商業化は進みません。

大学はというと、NHKが日本選手権の放映権をキープする事と戦前のラジオ少数時代、テレビの少数時代に放映権を取った事で野球の早慶戦、ラグビーの早明戦はNHKがキープしていて、そのほかの大学選手権もNHKしか放送しようとしてこなかった経緯があります。

それを最初に覆したといっていいのが、実は甲子園ボウルです。

元々甲子園ボウルの中継はずっとNHKがしてしましたが、後援は毎日新聞大阪本社です。ちょうどカレッジボウル等アメフトを新しいスポーツの柱にしようとしていたフシがあるようで、この関係から甲子園ボウルの中継を切り替えて全国放送するようになったのです。
※但し既述の通りバブル後にアメリカ側の制度変更によりカレッジフットボールを手放し、NFLは読売に興行権を取られる状態でした。というかバブル期から大手5紙の中で一番部数を落としているのが毎日なんですが……

しかし既に説明してきたように「高卒実業団」ラインと「大学」ラインが別継投で存在して「大卒相当の年齢で引退」という環境ではスポーツのコンテンツ化はあまり上手く進みませんでした。

それをさらに覆したのが、元々読売新聞が後援していた「箱根駅伝」の全行程中継です。これにより世界的にも超マイナーな「駅伝」が日本では特別なコンテンツになってしまった訳ですが……しかも一地域の強化大会があたかも最高峰のような扱いを売れますけどね。

この結果「スポーツで目立つことで優秀な学生を集める」事と「卒業生を実業団に就職させること」で大学の価値地位を上げる傾向が強まりました。
いやさアメフトの立命館なんて如実にそうでしょ。

この結果、実業団選手の選手寿命が延びます。そもそも就職して4~5年でピークになりそこから本業に専念する事が多かったのですから、23~25歳で引退していた訳です。でもそれが23~25で入社して4~5年、つまり28~30まで実業団選手の活動ピークが伸びてきた訳です(もとも70年代からラグビー等では伸びていましたが、柔道や器械体操もソウル五輪から次第に競技年齢が上昇します)。それと同時に実業団チームが数を増やして「競技で生活する時間」が伸びていくことになります。

これが皮肉なことに「大学スポーツが社会人に勝てなくなる」世界を生み出した事になるのですが、この構造転換についてこれない人たちが一定数居ます。

それは、競技が国際化されてこなかった「大学スポーツ」、特に大学ラグビーと大学アメフトです。
他の競技は「オリンピック」を頂点に「国際大会における日本チームの強化」という目標に根ざしてスケジュールされるのに対して、この2競技だけは国際大会がない(厳密にはラグビーには「テストマッチ」はあるが、定期的に日本が参加できた国際大会は存在しない。アメフトも同じ)関係で、大学スポーツで完結しがちだった訳です。
※但し例外として水球のように複数企業が実業団を構成出来ない物もあることは承知しています。

そしてこれが両競技における「日本選手権」の問題に繋がっているのです。



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